●フワサビの利点
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ワサビにはカリウムが多く含まれている。 |
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カリウムには塩分の摂りすぎによる、高血圧の予防や、筋肉の収縮弛緩機能低下による、便秘、肩こりなどを防ぐ効果があります。 |
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下痢止め作用がある |
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腸の粘膜での塩素イオン分泌を抑制するため、下痢止め作用があります。 |
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食欲増進作用 |
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わさびの色彩や辛味による食欲の増進だけでなく、消化管の細胞間結合における透過性を上昇させ、消化吸収までも促進します。 |
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殺菌・抗菌作用がある |
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ワサビの根、茎、葉のヘリコバクターピロリに対する抗菌性が調べられています。
根などのすべての部位がヘリコバクターピロリに対して抗菌性を示しました。
抗菌性は葉が最も強く、アリルイソチオシアネート(AIT)は根に最も多いことから、葉の抗菌性の強さは他の成分が関与しているものとしています。
マグロの赤身(脂肪含量0.006%)とトロ(脂肪含量3.0%)に、それぞれ約100個の腸炎ビブリオを接種し、ワサビあるいはAITを加えてインキュベイトしました。
その結果、ワサビとAITは赤身よりトロの腸炎ビブリオの増殖を阻害しました。 |
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静岡大学発表の研究論文による |
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ワサビが、がん転移予防の働きを持つ |
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ワサビはツーンとくるあの辛味が特色であり、ペルオキシダーゼのような強い酵素活性をもっているが、研究では、これらの成分以外の部分に注目した。
そしてヒトの胃がん培養細胞であるMKN−28への増殖阻害を指標として活性成分を精製した。
その成分は6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6−MITC)というものだった。
6−MITCは、辛味の主成分ではないが、すりおろすことによって増加する成分である。
熱に安定であることが大きな特徴だ。
この成分を化学合成し、多くのヒトの培養がん細胞に作用させたところ(in vitro)、乳がん細胞やメラノーマ(黒色腫)細胞への抑制が極めて高いことが分かった。 |
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東京都立短大健康栄養学科教授
(食品機能学) 福家 洋子 |
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ワサビが突然変異抑制力を持つ=抗がん効果 |
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変異原性とは、細胞に突然変異を起こす性質を言う。
突然変異の主な原因はDNA複製の誤りであり、自然でもある確率で起こる。
しかしベンツピレンやニトロソアミンなどの化学要因や、紫外線や放射線などの物理要因によりDNA鎖の切断や挿入、付加体の形成によって変異は起こる。
生体ではDNAの傷の修復を行うが、不完全であると誤った情報が伝達され、遺伝子の変異に伴う疾病、例えばがん細胞が発生する。
それ故、がんは遺伝子の病気と言われるのである。
現在、日本ではがんが死亡原因の一位を占めており、がん制圧は緊急の課題である。
がんは多段階を経由して生ずるが、まず細胞の突然変異が起こるとされ、それ故、変異原性と発がんはきわめて関連が深い。
従って変異を阻害することは、発がんを抑制することにつながる。
今回は化学物質と放射線に対するワサビの変異原性抑制作用について筆者らの研究を紹介する。
MeIQxの変異抑制を指標として沢ワサビ根茎より三つの光学活性物質(構造式参照)を同定した。
それらの中で最も含有量の多いn=6について別途化学合成したラセミ体(光学活性体とその鏡像体の1:1混合物)が同じ活性を示すことを確認した。
MeIQxは、代謝されて初めて変異原性を発現する。先の成分はこの代謝活性化酵素を阻害することを明らかにした。
しかしMXに対する活性成分および抑制メカニズムについては分かっていない。
一方、マウスにγ線を照射すると、染色体異常が末しょう血の幼若赤血球に小核として検出される。
ところが照射六時間前に沢ワサビ根茎や葉の抽出物を胃内に強制投与すると、小核の出現は有意に減少した。
これらの抽出物はラジカル捕そく作用や抗酸化性を示した。
この事実からワサビは、γ線照射により体内の水から発生した障害性の高いヒドロキシルラジカル(活性酸素)を消去して染色体への障害を軽減したと考えた。
抗酸化活性成分の同定を行っているが、ワサビは他の抗酸化食品と同様に、過剰な活性酸素の産生を抑え、各種疾病の予防や緩和に寄与する可能性が期待される。 |
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静岡県立大食品栄養科学部
客員共同研究員(有機化学) 古群 三千代 |
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ワサビにも抗血栓作用 |
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私たちは食用野菜や果実での試験から、アブラナ科野菜であるワサビにも、ニンニクやタマネギに匹敵するヒト血小板凝集阻害活性を認めた。
ワサビ根茎をすり下ろしたものの中から、三つの阻害物質を単離し、偶然にも突然変異抑制や発がん抑制の回でも出てきた「6−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート(n=5、6、7)」と同定した。
阻害活性はアスピリンよりも強いものであったが、阻害機構はアスピリンとは違い、血小板膜上にある凝集開始に関与するタンパク質(レセプター)へランダムに結合して、その働きを低下させていると推定した。
血小板は十日前後で新しいものが新生されてくる。
ワサビのみならず、このイソチオシアネート類(−NCSという部分構造を有する物質の総称)はカラシやキャベツ、ダイコンなどといった他のアブラナ科野菜からも摂取可能なため、バランス良く適量を食べ続けることで、血栓の形成を遅らせる効果は十分期待できるものと信じている。
そもそもこのイソチオシアネート類がワサビに含まれることを初めて報告したのは、静岡大学の衛藤英男教授と伊奈和夫名誉教授らであり、硫黄原子が酸化されていないイソチオシアネート類はワサビ独特のツーンとした「におい」の本体である。
日本は欧米に比べ心筋梗塞や静脈血栓症が少ないとされる。
遺伝的背景はあるにしても、ワサビ根茎をすり下ろして香辛作用を楽しむという食文化は、同時に抗血栓作用が期待される成分を摂取している可能性にもつながっていたと言えよう。 |
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お茶の水女子大生活科学部 助教授
(食品機能化学) 森光 康次郎 |
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ワサビに骨粗鬆症予防効果 |
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社会的に問題となっている骨粗鬆症の予防に注目し、、骨カルシウムの増強に効果を持つ食品成分を探索したところ、沢ワサビ葉柄の水抽出物に骨カルシウム増強効果がある事が分かりました。
沢ワサビには抗菌・抗虫作用、抗がん作用、血栓予防作用などがあることが報告されてますが、すべて辛味成分に関するものです。
そこで、辛味成分を除いたワサビの葉柄の水抽出物に着目し、骨カルシウムの増強効果を研究しました。
辛味成分を除いたワサビの葉柄の水抽出物には、マウスの頭頂骨(組織培養系)の骨カルシウム量を増加する効果が認められ、この効果は若いラットを用いた経口投与(動物試験)でも確認されました。
100gのワサビ葉柄から、ピンク色をした水抽出物乾燥粉末を約0.9gほど集めることができ、骨カルシウム増強作用物質は、熱、酸、アルカリに安定と思われます。 |
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静岡工業技術センター
地域産業技術部 食品技術スタッフ |